松下 尚士
2023年8月20日8 分
また、不動産取引自体が初めてとなれば、不安や戸惑いと同時に、大きな金額が動 くことになるため、失敗したくないという気持ちが芽生えて当然です。
注文住宅でマイホームを建てたい場合は、その流れを大まかにでも事前に知っておいた方が、不安や戸惑いが少なくなります。
流れを知ることで、いつ間取りを決めるのか、住宅ローンの契約のタイミングはいつなのか、引き渡し後の入居予定日はどれぐらい先なのかなど、必要な手続きや取引ステップが時系列で明確になるメリットが得られます。
一連の取引ステップが明確になっていれば、準備に余裕が生まれ、全体として効率的に動けるようになるのです。
そこで今回は、注文住宅における、
✓ 土地購入と住宅建築
✓ 住宅ローン(資金)
について、それぞれ一般的な流れを解説していくことにします。
注文住宅の流れと期間の目安
注文住宅では、土地探しと住宅選びという、2 つの大きなイベントが必要です。ただし、土地と住宅を別々に購入する場合に限った話です。
気に入った住宅プランが先に見つかれば、その住宅メーカーに土地選びを任せることも可能で、その場合は、土地探しの負担が無く、土地と住宅をセットで手に入れることができます。
前述のようなセットで購入するケースもありますが、まずは土地購入、次いで住宅購入の流れを、それぞれ解説します。
土地と住宅の購入に共通する項目、
⚫ 資金計画(予算の確保、ローン計画)
⚫ 購入条件や建築イメージの整理
⚫ 情報収集
については、流動的な面もあるため省略です。
土地購入の流れとスケジュール
土地情報の収集を重ねてマイホーム建築に適した土地を決定し、不動産業者を通じて売主に購入希望を伝えるまで、おおむね半年から 1 年ほど見ておくと良いです。
情報収集などを経て、購入に値する土地が見つかった場合は、
1. 不動産業者に買付証明書提出
2. 敷地、境界などをチェック
3. 重要事項説明を受けての売買契約
4. 地盤調査
5. 決済、引き渡し
6. 登記手続き
というのがオーソドックスな流れです。上記の流れの途中に、住宅ローン審査やつなぎ融資が絡んできます。
購入意思の決定から登記まで、半年から 1 年を要することもあります。
つまり、土地情報収集の時点からトータルでは 1 年から長くて 2 年を要することも不思議ではないということです。
注文住宅=こだわりマイホームを追求するならば、少々、長い目で向き合うことになります。
住宅建築の流れとスケジュール
土地の購入後は住宅建築となるわけですが、土地探しと住宅選びは同時並行で進めて、なるべくなら土地だけが手元にある状況が発生しないようにしたいところです。
なぜならば、住宅ローンの審査において、土地のみや住宅の建築工事請負契約の前では融資が認められないこともあるからです。
なお、住宅ローン(つなぎ融資)や資金繰りに関しては、次の章で少し詳しく解説します。
まずは住宅購入の流れをご覧ください。
1. ハウスメーカーの選定、見積もり
2. 住宅ローン事前審査
3. 仮契約
4. 住宅プランの詳細設計
5. 建築工事請負契約および建築確認申請
6. 住宅ローンの申し込み
7. 着工
8. 完成および竣工検査
9. 引き渡し
10. 登記、引っ越し
以上が一般的な流れとなります。
ハウスメーカーを何社かピックアップして資料請求やモデルハウス見学などをスタートしてから、新築に引っ越して新生活を送るまでには、やはり 1 年から 2 年は見ておく必要があります。
この間に、土地探しや土地の購入が決まるため、よほどのことが無い限りは、2 年以内には注文住宅の完成と想定して良いです。
実際のスケジュールは、ハウスメーカーが窓口となり、施主・不動産業者・金融機関と情報を共有しながら進めていくケースが多いため、心配することはありません。
注文住宅の土地と住宅に関する流れを説明しましたが、この章以降、
・つなぎ融資
・ 住宅ローンの事前審査
・ 住宅ローンの申込(本審査)
について、知っておいて欲しい情報をシェアします。
特に「つなぎ融資」については、初めて耳にする方向けに、できるだけわかりやすくお伝えします
注文住宅とつなぎ融資
一般的に住宅ローンと言われる商品は、建物工事完了後の引き渡し日が融資実行日と設定されるのが原則です。
建売住宅や分譲マンションなどは、既に建物が完成しており土地も含んだ価格に含まれています。ゆえに住宅ローンの審査と申し込みを終えると、融資金が引き渡し日に口座へ振り込まれ、残代金を支払うという流れになります。
売買契約の時点では住宅ローンの契約は成立しないので、手付金は自己資金で支払うことが必要です。
【手付金】
⚫ 売主と買主の双方合意で金額は決定
⚫ 一般的には売買代金の 10%前後
⚫ 不動産業者(宅地建物取引業者)が売主の場合は上限 20%
一方、注文住宅では、土地の購入後に住宅の建築となることが一般的です。
そのため、
1. 土地の売買契約時の手付金
2. 土地引き渡し時の残代金支払い
3. 建物工事請負契約時の契約金
4. 工事着手金の支払い
5. 上棟時の建物中間金の支払い
6. 完成時の建物残代金の支払い
これらの支払いについては、後に住宅ローンの融資を内諾している金融機関から、別枠で借入れして対応することになります。
それが「つなぎ融資」と言われるものです。
つなぎ融資の特徴は、
・ 用途は土地取得、建物の建築に限るなどの制限あり
・ つなぎ融資と言えど諸費用は必要
・ 単体では住宅ローン控除の対象とならない
・ 住宅ローン実行までに完済が求められる
・ 借入限度額や融資額は金融機関で異なる
・ 建物完成が延びると支払い利息が増加
・ 住宅ローンより金利が高い
といったことがあります。
つなぎ融資を利用する際は、金融機関の説明を優先してください。
住宅ローンの事前審査と本審査
注文住宅における住宅ローンの事前審査や本契約(本審査)のタイミングは、前述したように「つなぎ融資」との兼ね合いもあり、迷うところではあります。
ゆえに、ハウスメーカーや施工店選びを早めに行い、住宅ローンのアドバイスや相談、紹介を受ける状況にしておくと心強く感じるものです。
気になる住宅ローンがあるのなら、自ら金融機関に出向いて情報を得ても構いません。
ただし住宅ローンの事前審査は、なるべく早めに申し込むことが得策です。事前審査は簡易的な支払い能力をチェックする目的のため、数日から 1 週間程度で結果が出ます。
本審査は、ハウスメーカーや施工店との建物の建築工事請負契約の後になり、保証会社も入って詳細なチェックが行われます。審査期間も 2~3 週間から 1 ヵ月程度と長めで、事前審査をクリアしたから本審査も問題ないとは言い切れないのが現実です。
しかし、ハウスメーカーや施工店などのアドバイスを受けて、必要な書類等もきっちりと揃えていれば、住宅ローンの契約もスムーズに進みます。
住宅ローンに必要な書類など
住宅ローンに必要な書類は、申し込みをする金融機関により多少の違いはありますが、事前審査と本審査では内容が大きく変わってきます。
事前審査(仮審査)に必要な書類
事前審査に関しては、
⚫ 所得を証明する確定申告書の写し、源泉徴収票、所得証明書
⚫ 本人確認のための運転免許証、健康保険証、マイナンバーカード
⚫ 建物の間取り図や見積書(仮プランでも可とするケースが多い)
などを揃えます。
今の時代は金融機関によっては、WEB からの事前審査の申し込みが可能です。
本審査に必要な書類
本審査に関しては、
⚫ 運転免許証、パスポート、住民基本台帳カード、個人番号カード
(有効期限内のもの)から 1 点
⚫ 住民票の写し
⚫ 健康保険証
⚫ 収入確認書類
➢ 給与所得者
源泉徴収票、住民税決定通知書または課税証明書(直近のもの)
➢ 個人事業主
所得税の確定申告書および明細、納税証明書(直近 3 年分)
⚫ 不動産売買契約書、重要事項説明書、建築工事請負書(原本の提示)
⚫ 建築確認申請書(配置図、平面図、間取図、立面図を付属)
⚫ 建築確認済証(建築届出書)
⚫ 検査済証
⚫ 土地の公図、地積測量図
⚫ 建物図面、各階平面図、配置図
⚫ 不動産登記簿謄本(土地・建物)
⚫ 住宅地図または物件案内図
といった書類を提出することになります。
申込金額によっては、団体信用生命保険に関する書類も提出を求められることがあります。
お気づきのように、注文住宅を希望すると、
⚫ つなぎ融資
⚫ 住宅ローン
の 2 つのローンを抱えることになります。
同時に支払うわけではなく、つなぎ融資の完済後に住宅ローンの支払いがスタートするわけですが、それぞれ諸費用も審査も必要ということで、負担は小さくありません。
できるだけ自己資金を多くして、つなぎ融資の割合を少なくすることが肝心です。
注文住宅の流れや住宅ローン審査のタイミング、およびつなぎ融資について解説しました。
注文住宅と建売住宅または分譲マンションとは、少々、流れが違います。
特に「つなぎ融資」に関しては、注文住宅の特徴と言っても過言ではありません。
つなぎ融資は住宅ローンとは異なります。できるだけ自己資金の割合を大きくして、つなぎ融資を低く抑えることがポイントです